親族がマンションやアパートを所有したまま逝去されて相続する事になった時、もしくは不慮の事故で管理ができなくなった時、あなたならばどうしますか?
大家さんとして頑張って収益を上げていくか、売却して現金化するか迷う方が多いと思います。
今回はアパートなどを相続した場合どうすれば良いのか、どんな手続きが必要かを説明していきます。
まずはアパートを管理するのか売却するのか、どちらの方が良いのか考えていきましょう。
アパート・マンションを売却するのにおすすめなケース
・賃貸の支出を見た際に収益があげられていない
・相続税が払えない
・築年数が古い
・遺産分割で揉める可能性がある
賃貸の支出を見た際に収益があげられていない
賃貸に出している物件の収益を確認した際に、直近だけではなく年単位で見て空室が多いようであったり収支が赤字のようであれば、立地や間取り・家賃価格が需要にあっていないのかもしれません。
これから設備を増やしたり改修して好物件にしていこうという予定が無いのであれば、売ってしまう方が良いでしょう。
不動産を相続した際の相続税が払えない
不動産を相続した場合、その不動産の価値に応じた相続税が課されます、場合によっては数百万円にものぼります。
更地の相続税が高い事は有名ですが、アパートも空室が多い場合は相続税が高くなります。
アパート・マンション等の賃貸物件は相続税対策になるという話を聞いて賃貸物件を建てる方がいますが、それは入居者が多い場合に限られます。
賃貸物件を立てた場合は土地の利用が制限されるため土地の評価価格が下がり、更地に比べて土地の相続税が安くなります。
また、建物の評価額も貸家の場合は固定資産税が安くなります。
自家用ではなく他の方が入居する賃貸であることにより、オーナーの利用が制限されている事を考慮して固定資産税が自家用の住宅等に比べて安くなるのです。
そしてアパートの『入居室数』も多ければ多いほど利用が制限されるため土地と建物の評価価格は下がり、相続税も安くなります。
逆に空室ばかりの場合は所有者(オーナー)が空室分の土地建物の利用を制限されていないという事で控除が無くなり相続税が高くなります。
収益があげられていない程相続税が高くなるのです。
確実に収益が見込めて黒字になるようであれば頑張って払えばいいのですが、空室が多いようであったり、家賃が低いため、利益の回収が難しく、税金や修繕の金額が利益を上回るようであれば、建物の売却資金で相続税の支払いに充てる方が賢明でしょう。
築年数が古い
築年数が古い物件は様々な設備が耐用年数を過ぎていたり、近いうちに外壁塗装、配管工事、屋根の補修などの大規模改修をしなければいけない状態の場合があります。
古いほど募集賃料は安くなるのに、修繕等の出費はかさんでいくので、築年数が15~20年を超える場合は売却するかどうか検討した方が良いでしょう。
遺産分割で揉める可能性がある
相続で賃貸物件を誰が所有するか揉めるようであれば売却して現金化し当分に分けた方が穏便に済むことが多いです。
誰の資産になるかで揉めて相続人同士で『共有名義』にして共同で管理・運営を行う事になったりすると多くの問題が発生する事が多いため、誰か一人が所有する形にするのが良いでしょう。
もし資産の中でアパートの価値が他の相続資産よりも高い場合は、所有することになった相続人が他の相続人に補填する形で金銭や証券、資産価値のあるものを渡すことになります。
共有名義にするとどんな問題が発生するのか
全員の同意がないと賃貸売却ができない。
高く売れそうなので売りたい時や修繕の負担や固定資産税を煩わしく感じ、売却したくなった際にも共有者全員の同意がなければ売却する事はできません。
(共有権利の持ち分のみ売却できますという広告がネット上にはありますが売却反対者がいる中で持ち分のみ売ると大抵親族間でトラブルになります、また持ち分のみの売却は物件を丸々全部売却した時に比べて価値が低くなります)
勝手に共有持ち分を売られる可能性がある。
上記で記載した通り、自分が共有持ち分を売る事ができるのですから、当然他の共有者も弁護士や不動産屋に相談して共有持ち分を売却する事ができます。売却した際に他の共有者に通知等はいかないため、いつのまにか知らない買取業者が共有者に加わっていて、他の共有分の買取やあなたの共有分の売却をしつこく高圧的に求めてきたりしてトラブルになるケースがあります。
不動産の改築等の変更ができない
リフォームやリノベーション、大規模改修・大規模修繕といった行為は共有者の過半数の賛成が必要となります。
他の共有者と疎遠でなかなか連絡が取れない、了承が得られないなどの事情ででどんどん物件が古くなっていき、修繕ができないまま入居者が減ったり家賃を上げたくても上げれない状態になる場合があります。
共有者が亡くなって相続が起こると権利が複雑化する
共有分を持つ相続人が亡くなってなってまたその親族が共有分を相続してを繰り返して共有者が増えて細分化したり複雑化したり、共有者が増えるたびに同意を得る人数が増える場合があります。
その場合、建物が古くなって管理しきれずに売却しようとした際に共有している相続名義人がいつの間にか増えていて、そういった疎遠な相続人と連絡が取れず、物件が手放せなくなる場合があります。
管理するのにおすすめな場合
・賃貸の収益をあげられている
現状大きく収益をあげられているのであればそのまま管理を続けた方が売却するよりも長い目で見て大きな収益を得られる可能性が高いです。売却をする場合、当然、購入者はその購入金額以上の収益を上げる自信があるため購入をしているはずです。もし売却しなければ長い目で見て大きな収益を上げられる可能性が高いです。
・建物の築年数が新しい
築年数が新しいほど当然高く売却できますが、逆に言えば新しい時ほど収益を上げやすい状態となります。
築年数が浅く入居者が多いのであれば自分で管理したり管理会社に任せた方が長い目で見て大きく利益を得られやすく、古くなった際にはリノベーションの会社や建て替えの会社に売却するのが、もっとも長く物件を有効活用できる方法となります。
行わなければいけない手続き
相続登記
相続登記とは所有者が亡くなった場合に土地や建物の名義を、亡くなった方から遺産を引き継いだ方(相続人)へ変更する手続のことです。
現時点(2022年10月)では登記の申請義務や期間はありませんが、令和6年(2024年)4月1日から相続登記が義務化され、相続で不動産取得を知った日から3年以内に登記や名義変更をしないと10万円以下の過料の対象となります。
また、相続登記をして名義人になっていないと物件を売却したり担保にしたりできない他、アパートの名義を被相続人のまま放置していると、その不動産は相続人全員が共同で所有している状態になります(上記で紹介したような共有名義の状態となります)
その結果、名義を放置したまま年数がたつと相続人が亡くなりまた相続されてという連鎖が起こり、遠い親戚や関係が疎遠な親族が共有者になってしまい、売却等の手続きが難しくなります。
なので義務はありませんが、相続登記は必ず行いましょう。
相続登記は書類の作成や法務局での登記申請の手続きなど、一般の人では慣れない煩雑な手続きが多く、万が一の不備が無いように専門家である司法書士に任せるた方が良いでしょう。(5万~10万円程で手続き可能です。)
家賃の振込口座を変更して入居者に通知する
被相続人が亡くなると口座が凍結され、お金の引き出しも振り込みもできなくなります。
その場合入居者様はお家賃を振り込めなくなってしまうので、相続確定前でもすぐに遺族名義の口座などに振込口座を変更し、入居者に振込先を通知しましょう。
アパートのローンを確認する
アパートのローンが残っている場合は相続人がローンを引き継ぎます。
その際にローンの債権者である金融機関の承諾を得る必要があります。
金融機関の承諾を得ないままの場合は相続人全員が法定相続分に応じて債務を負うことになります。
金融機関もローンを引き継ぐ方の返済能力などを審査しなければいけないため、ローンを引き継ぐ人が決まったら場合は金融機関に相談し、債務引受の契約を結びましょう。
また、その際には物件についている抵当権の債務者変更登記も必要になります。
相続登記と同様に司法書士に依頼する事をオススメします。
準確定申告をする
準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)の収入に対する確定申告のことです。 生前に本来本人が行っていたはずだった確定申告を、相続人が本人に代わって「準確定申告」として行います。
アパートなどの家賃収入がある場合、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内に準確定申告をする必要があります。
亡くなった日までに支払期限が到達している家賃収入が被相続人の収入となり、準確定申告が必要な所得となります。
管理会社を探す
自身で相続した物件を管理できるのであれば問題ありませんが、本業をしながらアパート・マンションの管理をするのは大変難しいです、毎月月末には家賃の管理を行わなければいけませんし、雨漏りや設備の故障、他の入居者の騒音やゴミ出し、タバコのクレームなどが365日入居者様からかかってきます。
そういった場合は管理会社に任せるのがベストでしょう。
管理会社は入居者の入退去やクリーニング、クレームや設備の故障に対応してくれるので、
物件オーナー様がやる事は、管理会社から手配された業者の見積もりを確認する事と、退去者が出た時の募集の条件を確認するだけです。書類の作成等も管理会社がやってくれるので、基本的には必要書類は渡されたものを確認して記名捺印を行うだけです。
毎月5%程度の管理費は発生しますが、日々の生活を物件の管理に煩わされるよりは管理会社に任せた方が安心でしょう。
管理会社のメリットや選び方は以前にも投稿しているので、是非一度お読みください
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