資格の問題と聞くと小難しくて面白味の無いように聞こえますが、
ただ小難しいだけではなく、中には少し変わった内容のものや意外な決まり事があるものです。
『宅建』のような有名な資格ですと不動産知識に興味が無い人でもちょっとした面白話として話せるような事がいくつもあります。
今回は宅建の頻出問題である『詐欺や脅迫によって売買契約を結んだ場合の契約の取り消し』についてお話します。
詐欺の契約の取り消し
例えばこんな事例があったとします。
Aさんが持っている土地をBさんが言葉巧みに騙してAさんから格安で購入したとします。
Aさんが詐欺に気づいてBさんに取り消しを求めた場合、それは当然に適用され売買契約は無かった事になります。
しかし、Aさんが詐欺に気づく前にBがCさんに既に土地を売り渡してしまっていたらどうでしょう。
詐欺に気づいた時には既にCさんは正当な対価を支払ってその土地を購入しているのに、AさんのBさんに対する売買契約を取り消す事は可能なのでしょうか?
答えは 取り消すことができません。
(理由は後で解説します)
では次に詐欺ではなく脅迫ではどうでしょう?
脅迫による契約の取り消し
Aさんが持っている土地をBさんが脅迫する事でAさんから格安で購入したとします。
Aさんが後から脅迫された旨を警察に連絡してBさんに契約取り消しを求めた場合、それは当然に適用され売買契約は無かった事になります。
しかしAさんが脅迫による契約の取り消しを行う前にBさんがCさんに既に土地を売り渡してしまっていた場合はどうでしょう、先ほどの詐欺と同じように契約を取り消すことができないのでしょうか?
答えは 取り消すことができる
という事になります。
詐欺と脅迫で土地を取り戻せるか、答えが変わる理由は何なのか。
詐欺による前者の例と脅迫による後者の例、契約の取り消しができたり、できなかったりするのは何故なのでしょうか?
それはAさんの過失の割合(度合)によるものになります。
まず、今回の例に上げられるCさんは大前提としてAさんが詐欺にあっている事を知らないし、知るすべもない人とします。
これを『善意無過失の第三者』と言います。
ここで言う『善意』とは一般的な日常で使うような「善意で行ってくれる良い行為」「他人のためを思う親切心」といった意味ではありません。、
ぜん‐い【善意】
- よい心。
- 他人のためを思う親切心。好意。「―の人々」⇔悪意。
- 好意的に相手の言動などをとらえること。よい意味。「―に解釈する」⇔悪意。
- 法律で、ある事情を知らないですること。私法上、原則として善意の行為は保護され、責任は軽減される。⇔悪意。
今回使われるのは辞書上での4の意味の言葉となります、
Cさんは善意無過失なので、前の土地の持ち主が騙されていたり脅迫されている事を何も知りませんし、今回の売買に関して何の落ち度も問題もありません。
そこでAさんの過失はどうでしょう、
・言葉巧みに騙されて売買契約を結んでしまった場合
・脅迫されて無理やり売買契約を結ばされてしまった場合
どちらの方が過失があるでしょうか?AさんとCさんのどちらを保護するべきでしょうか?
民法においては詐欺で騙された場合は、Aさんは詐欺に気づけなかった有過失とされます。
そして何の落ち度もなく売買行為を正当に行ったCさんが保護されます。
もちろんAさんがBさんに賠償を求める事は可能ですが土地を取り戻すにはCさんに交渉して土地を買い戻す等の正当な手続きが必要となります。
逆に脅迫においてはAさんは過失無しという事になります。
脅されて仕方なく従っただけであるAさんが契約を無効にできないというのはあまりにも酷であるという判断となります。その場合はCさんの契約なかったことになります。
民法や宅建を何も知らない場合は、なんとなく詐欺と脅迫のどちらも無効にできそうですが、意外な事に詐欺に関しては第三者の手に渡ってしまった段階で取り戻すことが難しくなってしまうのです。
こちらの事例は宅建の頻出問題なので宅建を勉強している人は殆どの人が知っている事になります。
私も勉強していた時に『世の中には意外と知らない決まりが多くある』という事を思い知った問題でした。
他にも宅建には様々な面白い知識を学ぶことができます。
今後も変わったルールや事例を紹介していければと思います。