近年、テレビやインターネット上でメタバースという言葉をよく耳にする事が多くなってきました。
メタバースとは仮想現実の事で、ネット上で作られた三次元の仮想空間等を通して他社と交流したり生活する事が可能とされる、いわば現実とは違う、『第二の世界』ともいえるべき場所です。
さらには、近年では仮想空間内での土地の売買の取引等も行われており、二束三文ではなく、現実と同じように数千万円で取引されているためニュースなどにも取り上げられています。
なぜデータ上の土地を何千万という金額を出して購入する人がいるのでしょうか?
果たしてその土地に価値はあるのでしょうか?
なぜメタバースの土地に期待されているのか
FacebookやInstagramを運営しているアメリカの超大手企業Facebook, Incは2021年10月に社名を『Meta』へ変更し、メタバーズ事業へ注力する旨を発表しました。
これにより多くの企業や投資家がこれからメタバースが流行るだろうと予想し、VR(仮想現実)AR(拡張現実)MR(複合現実)関連の事業が伸びるだろうとの事で、VR関係の事業に関する話題が盛んになりました。
『サマーウォーズ』や『竜とそばかすの姫』という映画作品をご存じでしょうか?
この映画では誰もが仮想空間上のアバターを所有し。普段の日常を仮想空間上で過ごし、遠くの人といつでもどこでも交流する事が可能となっています。
ショッピングも仮想空間上で行えるし、公共機関への支払いも仮想空間上で行えます。
もしそんな世界が現実にやってきたとして、多くの人が集まる仮想空間上の、いわば、VR空間におけるハチ公前のような存在の土地を所有できたとした場合、それはかなりの価値があります。
その土地に広告を出すだけで多くの金銭を得る事ができますし、イベントを開催したり通販ショップなどを開く事で収益を上げられるかもしれません。
現状はセカンドライフの二の舞
かつて2000年代前半のインターネット黎明期に同じような試みがありました。
現実を模した3D世界にパソコンからアクセスして、ネット上で現実とは別の生活を送る事ができる、セカンドライフというオンラインゲームです。
ゲーム内通過はドルと換金可能で、こちらのサービスも現在のVRサービスと同じように仮想空間内の土地が取引されていました。
しかし、そのサービスの実態は第二の生活空間と呼ぶには程遠く、ちょっと広大で色々なサービスのついたチャットメインのオンラインゲームのようなものでした。
当時PCを持っている人もそこまで多くない上に、接続も遅い、同じマップに入れるのは50人までという制限のため技術が理想に追いつかず結局廃れていきました。
仮装現実の土地を売り買いするには早すぎるかもしれない?
例えば、かつてIPhoneが登場した時に、多くの人が興味を示さなかったものの、今では周りを見渡せばだれもが多種多様なスマートフォンを所有しているように。
また、今では多くの取引に使用されているビットコインを最初に購入した人たちが億万長者になったように。
今後、未来で誰もがVR空間で遊ぶようになったとして、その黎明期のバーチャル世界の土地を所有する事で後々のメリットになる可能性はあり得ないという事は無いように感じます。
しかし、実際の土地ではなく、企業がサービスを行っている仮想空間上の土地である以上は。
電子書籍のように、今日からサービスを終了しますと言われた時点で、購入したものの価値は全て等しくゼロになります。
また、今後いくつかの企業から複数のサービスが登場する以上は、かつてビデオテープのベータがVHSに負けたように、LightningケーブルがUSBタイプCに負けたように、購入した土地のサービスがどんどんと新しい記述に追い越され廃れていき、暴落する可能性も高くなります。
リスクがあるのは現実も仮想世界も同じ
現実の土地や建物も、状況によって捨て値のようになる場合があります、かつて3000万円で取引されていた新潟のリゾートマンションはいまや10万円~100万で取引されています。
スキーブームの終焉や大規模マンションの修繕積立金の負担により、『負動産』のレッテルを貼られどんどん値下がりしていったのです。
しかし、暴落する場合であっても現実の物件は徐々に価値が下がっていく事が多数で、VR空間の土地のように1年で9割価値が下がったり、急にうなぎのぼりで価値が上がったりはしません。
現実とVRでリスクが有る事は同じですがVRの不動産はよりハイリスクハイリターンになるため、未来をよりよく見通す力が必要となります。
これからのメタバースは完全に未知数
ITメディアによると、2021年頃から発生したメタバースブームによる事業に参入した企業の9割が事業化に失敗しており、大手プラットフォームの仮想空間上の土地の価格は9割の下落をしているとの事です。
いつか遠い未来で電子上の土地が価値を持つことは大いにありえるますが、それが今回のメタバースブームから発生するかどうかは未知数となります。
もしも今回のメタバースブームが定着せずに、上記で上げたセカンドライフと同じような道をたどった場合、今回数千万で仮想空間上の土地を買った人たちの多くはそのまま数千万の損をする可能性があります。
しかし、直近ではAppleの活気的なVRゴーグル『Apple Vision Pro』の発表やmeta社の『meta Quest3』の発表があったり、GoogleによるAR眼鏡の開発の情報が出回っています。
引き続き仮想空間や仮想現実が盛り上がりを見せ続けて、このまま多いに発展して世間に定着すれば仮想空間上の暴落した土地の価値が戻る可能性もあります。
どちらに転ぶかは完全に運の領域であり、仮想空間の土地が無価値になるか金脈になるかはまだまだわからない状態です。