浄化槽というものをご存じでしょうか?
浄化槽とは家庭から出る汚水等を綺麗にしてから川などに流すための設備です。
都市部であれば各家庭の汚水は下水道を通って下水処理場へとたどり着き、そこで綺麗に処理されてから川などに流されます。
しかし下水道が通っているのはライフラインが発達した地域のみの話であり、
一部の下水道が通っていない地域では浄化槽を使用し各々の家庭で水を綺麗にした後、側溝などを通り川などに流されます。

ライフラインの整った地域にしか住んだことのない人は『浄化槽』という単語そのものを聞いたことが無いかもしれません。

浄化槽の仕組み

浄化槽は微生物の働きを使った汚水浄化設備です。

浄化槽内には大量の微生物が住んでおり、その微生物達がトイレや台所から流れ出た汚水に含まれる有機物(汚れ)を食べる事で分解し、綺麗な水へと変えていきます。

浄化槽内は微生物が繁殖、活動しやすいように作られており、1mlあたり1,000万〜1億個もの微生物がいると言われています。
また、量だけでなく種類も豊富で、2000種類以上の微生物やバクテリア(細菌)が浄化槽内で活動し、日夜流れてくる汚水を綺麗にし続けます。


つまり浄化槽とは微生物や細菌を飼う虫かごのようなものであり、家庭から出る汚水は餌となるわけです。

賃貸物件における排水の処理は、浄化槽と公共下水(下水道)はどちらがお得か。

賃貸を借りる際の募集条件を見ると、設備情報の欄にガス等の情報と合わせて、排水の処理方法が記載されています。公共下水か浄化槽の2種類にわかれますが、どちらの方がお得なのでしょうか?

それは募集条や物件によって変わっていきます

戸建て物件の浄化槽の場合、維持メンテナンス費用が借主負担になる場合が多い。

戸建て物件の場合は借主負担にて年に数回、浄化槽のメンテナンスを業者に頼む必要があります。
これは浄化槽内の点検、水質の調査や微生物の維持管理、汚水処理の最終工程に必要になる塩素剤の補充
汚水処理後に浄化槽内に貯まる汚泥の汲取り等が含まれます。
平均して年に5~7万円程度の費用がかかります。
しかし、下水道の物件では使用料に従って上下水道の使用料が上がっていくのに対し、
浄化槽物件では下水道を使用していないため、いくら水を使っても上水道の料金しか上がりません。
自治体によって上水道、下水道の料金は大きく変わります。
大家族で大きい戸建てに住むのであれば浄化槽の方がお得になる場合がありますので、今現在の年間下水道使用料と候補となる賃貸戸建ての浄化槽年間メンテナンス費用、候補となる地域の水道料金を不動産会社に聞きつつ比較してみるのが良いでしょう。

例 メンテナンス費用が年間6万円であれば 月々の下水道代が5000円以上の場合は浄化槽の方がお得になります。

浄化槽維持管理(市川市ホームページ)

集合住宅の場合、上水道のみの請求になる事が多いのでお得!!


浄化槽を利用しているアパート・マンションの場合、浄化槽は物件の設備なので当然そのメンテナンス費用や修理費用はオーナー負担となるケースが多くなります。
その分、浄化槽代が賃料に含まれるような形にはなりますが、戸建てとは違い、浄化槽代は借主たちで家賃の中から実質折半しているか、ほぼ家主が負担しているような形になります。
つまり、下水道料金が個人に対して請求される事はありません。
(契約内容によって変わる場合もありますので、募集図面をよく確認しましょう)
月々の水道料は上水道のみの請求になるため、浄化槽利用物件で賃料もそれほど高くなければ公共下水の物件に比べてかなり水道料を節約する事ができます。

しかし、一番最初に紹介した通り、栄えている所や都市部では公共下水が設置されている事が多く、浄化槽は『下水が通っていないから代わりに設置されている』事が多いものです。
つまり浄化槽の物件は駅から離れた住宅街等のアクセスが良くなかったり、辺鄙であったりすることが多くなってしまいます。

浄化槽に流してはいけないもの

浄化槽はあくまで生活排水や汚水を綺麗にするためのシステムなので、流してはいけない物が色々とあります。その代表例を見て見ましょう

流せる生理用品(紙オムツ等)お掃除シート

流せる生理用品等は浄化槽内の微生物が処理する事が難しく詰まりの原因になります。

生ごみ

残飯や生ごみ等、基本的に水に溶けないものは処理できないため詰まりの原因になります。
野菜くずや魚の骨などを流さないようにしましょう。

大量の油

排水パイプの詰まりの原因になります。また油は微生物の分解が難しいため、
食器についた多少の油などであれば問題ないですが、天ぷらで使った油や、アヒージョで使った油等は排水として流さずにキッチンペーパーなどで吸い取ってゴミ箱に捨てましょう。


アルカリ性洗剤

アルカリ性洗剤は浄化槽内の微生物が死んでしまうためなるべく使わないようにしましょう。
絶対に使ってはいけないというわけでは無いようですが、頻繁に大量に使用すると、菌が少なくなりすぎて浄化槽の能力が落ちてしまいます。
「中性もしくは酸素系の洗剤」を使用するようにしましょう。

まとめ

浄化槽は公共下水の物件と違い下水使用料の請求が来ないため、アパート・マンションでは借主がお得な事が多いです。
しかし、公共下水が整備されていないような不便な立地である事が多いです。
賃料や立地、お部屋の設備等、間取りを優先して考え、浄化槽か公共下水かどうかは、あくまで物件を決める際の1要素として考え、メインの条件をクリアしたうえで、最後に浄化槽でも問題ないか考えるのが良いでしょう。
特に戸建てで浄化槽物件を借りる際は費用や、メンテナンスの面で普通の公共下水物件に比べてリスクがあるため、浄化槽の場合は契約内容や、どこまでが借主負担になるのか、年間費用はどのくらいになるのかをよく確認してから契約した方が良いでしょう。